【ネタバレ感想】映画「火花」は今の世代にこそウケる葛藤と悩みが満載の傑作劇だった
(映画「火花」公式HPより引用)
こんにちは、ぶんたです。
又吉さん原作の映画「火花」見てきました!
小説が話題となり、テレビ番組やニュースなどでも噂には聞いていた火花。
その後、Netflixによるドラマ化。そして映画にまでなった作品です。
そんな火花を公開日直後に見に行ってきたのですが、もうなんというか。。。
うわぁ〜…染みる….
と言った感想です。
1人の若者が芸人という職業を通して大人になっていく葛藤を描いた火花。
あったかい話でもありながら、心に染みる作品。苦しいなと共感する部分もありながら、切なく朧げな作品です。
というわけで今回は映画「火花」の感想を書きました!
途中からネタバレもありますが、気になる方は読んでみてください。
又吉さん原作の「火花」とは?
そもそもこれだけ話題になった「火花」とはどんな作品なのでしょうか?
僕自身も映画を楽しみにしていながら、原作はまだ読んでいなかったので今回少し調べてみました。
なんと、今回原作となった「火花」。
2015年に「153回芥川龍之介賞」を受賞し、280万部ものベストセラーとなった超有名作品だったようです。
主人公同様、原作者の又吉自身も芸人ということで、リアルに描かれた芸人の生活や葛藤が響く作品だったのかもしれません。
と、ここまでの事前情報で火花を見に行ってきたので、まだ原作は読んでいませんし、それでも良い作品だったなと改めて思います。
ここからは具体的なネタバレも含むのでまだ見ていない方はブラウザバックで!
30秒でわかるで火花のネタバレあらすじ
熱海のお祭りのステージで、主人公徳永と奇抜な発想で周りを魅了する先輩芸人の神谷が出会う。
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その後神谷に弟子入りした徳永は東京でお笑いを続け、神谷は大阪で。その間もやり取りを2人はやり取りを続け師弟関係が続く。
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1年後上京してきた神谷と徳永が再会。2人で飲み明かしたり、神谷と同棲している真樹と一緒に食卓を囲んだり、互いに芸人として認め合いながら日々を生き抜く。
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実は風俗嬢だった真樹と神谷の突然の別れ。しかしそんな男女の別れも笑いに変える神谷。
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神谷、徳永の同期の鹿谷が一気にデビュー。そんな鹿谷と自分を比較しながらも徳永のお笑いコンビスパークスも少しずつテレビの仕事に出始める。
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久しぶりに会う徳永と神谷。芸人として生きていく現実への辛さを神谷にぶつける徳永。その後、神谷とは会わなくなる。
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徳永のコンビ、スパークス解散。相方の結婚を機に芸人を辞める。
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2年後、不動産屋に就職した徳永の元に神谷から連絡が。久しぶりに会うも何も変わっていない神谷へ苛立ちをぶつけながら、初めて神谷と会った熱海へ向かう。
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熱海にて自分一人としての漫才ではなく、みんなで作り上げた「漫才」として自分を語る神谷。そんな姿に呆れながらもどこか懐かしく、神谷を見る徳永。
火花を見て思ったネタバレ感想3つ
というわけでネタバレ感想を書いてみたのですが、すみません僕の伝える力が乏しくうまく内容を説明できませんでした。。。
ただ、僕の力不足もあるとは思うのですが、それ以上に深く染みる作品なのです。
数行で表せるような映画ではありません。
そんな火花を見て思った感想を3つ挙げました。
ズバリ、火花はこんな作品です。
日の当たらなかった人、それぞれのストーリーに焦点を当てた作品
まず、断言できるのは火花はハッピーエンドではないと僕は思います。
じゃあバッドエンドなのかと言うとそういうわけでもないのですが…
これは今回の映画「火花」の構成にも由来してきます。
映画「火花」の構成は年代ごとにナレーションやストーリーが描かれるスタイルです。
例えば2002年には神谷と徳永の出会い、2010年にはコンビの解散のストーリーがメインで描かれたり。
といったようにそれぞれの年代ごとで焦点が違い、同時に彼らの葛藤も全く違ったものになっていきます。
特に主人公の徳永は芸人として生き抜くこと、同期がどんどん売れていくこと、神谷さんと変わっていく自分との軋轢、相方との関係など様々な人間模様が描かれるのです。
一概にこのシーンが一番良かったというような比べられるものは無いなと思います。
しかし、共通するのは日の当たらない人生という部分。
芸人というあまり知られることのない職業の裏側から、彼らの苦悩までを余すことなく映像化していました。
火花は悟り世代を先駆けた若者と夢を諦める方法を見失った大人の傑作劇
そんな火花に僕らがなぜ共感できるのか、実際にこの年代だからこそ感じたことがあります。
いわゆる僕も含めた今の20代は悟り世代とも言われていますね。
様々なことがネットで知れるようになり、悟るように世の中を生きている僕らだからこそわかる感覚があるのです。
そして、火花の主人公徳永は僕らのような悟り世代の先駆けのような存在。
10年間芸人を続け、結局売れなくなり現実を見て辞める。
ラストに近づけば近づくほど、自分の理想と現実との狭間に揺れる徳永の心情が苦しくも凄く共感できる物語でした。
ただ、徳永の師匠である神谷はその逆の存在です。
言ってみれば悟り世代よりもずっと前の世代。
いわゆる熱血な世代の生き残りなんじゃないかと僕は感じました。
彼らが築き上げた時代を自分の思うように生きて、そしていつしか諦める方法を見失い、現実を見る術を見失った世代。
心強くも、しかし、今の時代にとって彼らは異常なまでに儚く、そんな現代社会とのミスマッチが神谷を輝いて魅せる要因だったのかもしれません。
火花が集まって花火になる。ラストシーンで花火を見に行った理由
またラストシーン、久しぶりに再開する徳永と神谷ですが、苛立ちを見せながらも2人が初めて会った花火会場に向かいます。
徳永の心境はきっと、神谷さんとの楽しかった思い出を終わらせるため、花火のように散らせるためにその場所を選んだのではないでしょうか。
しかし、神谷が語る芸人としての生き方は、小さな小さな火花のような自分たちみたいな存在でも、そんな存在がたくさん集まることで、花火のように大きく咲く仲間がいるのじゃないかと語りかけているようでした。
初めて意気投合した場所で残酷な時の流れを感じながらも、芸人として生きる道を選んだ2人を表すに相応しい最後だったなと思います。
「火花はこんな作品だったらさらに良かった」と言う僕なりの批評
葛藤や苦悩のぶつかり合う作品だった火花。
芸人さんの裏側はあまり見れるものではないと思いますが、華やかな世界にはこんな裏話があるということを実感できる映画でした。
そんな火花を見て、さらにこんな作品だったら良かったなと思った僕なりの批評を書いておきます。
神谷視点の物語も見てみたい
一番はやはりコチラ。
今回の火花という作品は全て徳永の視点から物語が描かれていますが、もう一人の主人公でもある神谷の視点からも物語を見たかったなーと思いました。
例えば、容姿端麗な真樹の家に住んでいた神谷が、その後、お世辞にも綺麗とは言えない女性の家に住まう場面。
そして徳永の服や髪型を真似た時の心情。
僕としてはあの時の神谷は本当に辛かったのではないかと思います。
しかもそれからかなり長い間、愛弟子として可愛がっていた徳永とは会わなくなるのですから….。
徳永にも徳永なりの葛藤があって、それは特に悟り世代である僕らはよりリアルに理解できるのですが、きっと神谷は神谷で想像を絶する苦悩を抱えていたと思います。
変わっていく徳永といつまでも変わらない神谷の軋轢は両者の視点から描かれて初めて完成するのではないでしょうか。
ムーディ勝山が出ていたようですが…
火花で一番びっくりしたのがムーディ勝山が出ていたらしいこと。
エンドテロップに名前が出てきたので恐らく出ていたのだと思いますが、僕は確認できていません…。
で、僕この名前を見た時「うわあ…火花出るの凄い辛かったんじゃないかなあ….」と思ってしまいました。
以前はよくバラエティで見るくらい売れに売れていた芸人さんだと思いますが、今はあまり名前を聞きませんね…。
そんなムーディ勝山さんの現状を考えると、正に徳永のような理想と現実の狭間で生きているように思えて仕方なかったのです。
僕が最後に気づいてしまったのがいけないのかもしれませんが、なんとなく彼が出ているというのはお笑い界の皮肉のように感じました。
総評:火花は「今」だからウケる映画なのではないか?
というわけで映画「火花」の総評ですが、「火花は今だからこそウケる映画なんじゃないか」と思います。
めちゃくちゃ良い作品で僕は大好きなんですが、恐らく今の僕ら若者が見るから共感が伝わってくるのかと。
生きづらい現実や自分の夢や理想との狭間を鮮明に描き、どこかわかってはいるけれど目をそらしたい欲求と戦う徳永が、悟り世代の僕らにマッチしていたのではと思います。
思えば去年放映していた映画「何者」もそうですね。
こちらの「【ネタバレ感想】映画「何者」をもう二度と見たくないと思った理由」という記事で感想を書いていますが、この作品も現代社会のどこにでも潜む心の闇を描いたもので、僕らだからこんなにも共感を呼んだのかな、と。
そういう意味では今の時代にはめちゃくちゃ刺さる映画なのですが、10年後の世代にはまた違った印象を見せるかもしれません。
原作小説はまだ読んでいませんがこれを純文学で描いた又吉さんにあっぱれ。
リアリティ高く、強い苦悩や葛藤に圧倒された作品でした。